Saoriさんはフリーランスのウェブデザイナーとして独立するのと同時に、現在、自宅兼仕事場兼インターネット上で販売している古道具の保管場所として使っている築100年の古民家を借りた。そこでひと部屋余ったため、以前から興味があったというAirbnb(エアビーアンドビー)のホストをスタートさせた。
「私は交流を目的としてホストを始めたわけでないんです。上手に英語を話すこともできないですし……。元々、余ったリソースを活かすというシェアリングエコノミーのような考え方に関心を持っていて、古民家を借りたことや古道具を売っていることはその一環なんです。ホストを始めたのもその考え方に通じます」。
ホストをやってみたい、けれども自分に務まるのか、とはじめは誰もが不安を抱くはずだ。しかし、実際にホストをする上での条件を考えて欲しい。インターネットと寝泊りができる部屋さえあれば最低限はまかなえる。もちろんゲストを迎え入れる気持ちや多少の準備は重要だが、使わない物を誰かに使ってもらうという意識に転ずれば、かなりハードルは下がるかもしれない。
特に、普段仕事をしている人にとってホストは難しいことかもしれない。しかし、Saoriさんの場合は、1回の宿泊を2泊までに限定し、ゲストの受け入れを月のおよそ1/3だけに留めていると言う。部屋に泊まりたい人を少しの間だけ受け入れる。シンプルな需要と供給のマッチング。それはそれでホストとゲストの関係として正しいと思うのである。
リスティングのひと部屋で黙々と仕事をするSaoriさん。日中から夜間まで働き詰めのため、ゲストの対応が息抜きになっている。
こちらはSaoriさんの仕事場の裏手にあるミーティングスペース。ゲストも利用することが可能で、お茶を飲みながらくつろぐこともある。
和の設えにちょっとモダンなインテリアを組み合わせた、落ち着いた雰囲気の宿泊スペース。築100年ということで引き戸や天井の表面はかなりの味を醸している。
「朽ちているものが好き」と言うSaoriさんの趣向が建物自体に表れている。この古さとは裏腹に、同じ構造の建物が連なってひとつになっているため耐震強度は高いそうだ。
Saoriさんのリスティングに入るとすぐ、たくさんの古道具が出迎えてくれる。取り壊してしまう建物に残されていた物を買い取り、販売を行っているとのこと。
室内の所々には花が飾られている。味のある建築とたくさんの古道具に囲まれた環境に彩を与える絶妙なアクセント。Saoriさんのセンスが光る組み合わせだ。
この道が形成されたのは1740年頃。1986年に町並み保存地区として指定され、以後、形成当時の趣を残すために、修理・修景が行われている。「徒歩15分ほどで行ける、蔵と町家が立ち並ぶ風景が有名な場所です。古民家を利用したレストランなどもあります」。
リスティングのほど近いところにある隠れ家的なアイリッシュバー。「非常に雰囲気がよく、近くに外国人専用のマンションがある関係か、常に英語が飛び交っているのでゲストによくお勧めしていますね。ちなみにランチも美味しいですよ」。
住所:愛知県名古屋市西区名駅2-20-30
TEL:052-784-6488
「伝統工芸『有松絞り』の産地で、江戸時代から続く古い街並みが残っている場所です。カフェや雑貨屋も増えてきてより面白くなってきています。家からはちょっと遠いのですが(電車を乗り継ぎ30分ほど)、今、名古屋で一番お勧めしたい場所です」。
以前、勤めていた会社も古い日本家屋を事務所にしていたんです。その雰囲気がすごく気に入っていたのですが、取り壊されることになってしまい、普通のオフィスビルに移転しました。そこで自分の家として古民家を探し出して、今年の1月に引っ越したタイミングでフリーランスとして独立し、それと同時にホストを始めました。
ホストをはじめる前は外国の方に対して色々な思い込みをしていたんです。あそこの国の人はこういう性格といった感じに。でもその思い込みはほぼなくなりましたね。それはとても良かったと思います。
とにかく英語が話せないことですね。どこに行くの?など、簡単な質問くらいはするのですが、その後は答えを聞いているだけになっちゃうんです。雑談ができないっていうのはやはり辛いです。でも近々、英会話を習おうかなと思っていて、少しずつステップアップできればと思っています。
英語が苦手だとメールのやり取りもハードルが高いと思うんです。当初は英語が得意な友達に見てもらいながらやっていたのですが、毎回頼むのも悪いなと思い自分でメールを打つようにしたら、段々と慣れてきたように感じています。文法的におかしな部分があるかもしれないけれども、とにかく英語を使って、伝えることが大切なんだと痛感しました。苦手意識や不安があっても、頑張ればきっと乗り越えられると信じています。