潮風が舞う蒲郡市の海沿いのエリアに個性豊かなコンセプトハウスが建ち並んでいる。ここは、昼はいわゆる住宅展示場だが、夜は一棟貸切タイプの宿泊施設になる。宿泊者は備え付けの家具や家電、食器類が自由に使え、アメニティも備えたバスルームもある。食材を持ち込めばキッチンやバーベキュー設備で食事も楽しめる。ここは、実際に売られているモデルハウスでリアルな“試し暮らし”を体験することができる『泊まれる住宅展示場』なのである。
『泊まれる住宅展示場』をつくったのは、住宅関連企業にコンサルティングを行っている住宅アカデメイアである。ユニークな展示場はなぜできたのか、FBA事業部・部長の中井さんに話を聞いた。
「理想の暮らしを見つける上で、人生の中で非常に重要なのが”家選び”。そこで、自分がほんとうに好きな家を見つけて貰いたいという想いから、実際の暮らしを体験して自分に合った家を探す“試し暮らし”のできる展示場をつくりました。一般的な展示場のモデルハウスは、見学することが目的で、実際に住むことができない仮設建築物がほとんどです。そこで、家選びでも洋服の試着や車の試乗と同じように”試し暮らし”ができないだろうかと考えました」
住宅展示場であるにも関わらず、ここには営業マンがいない。代わりに『ハウジングツーリスト』という専任スタッフが常勤しており、宿泊者のアテンドもしてくれる。この呼び名は、“家の旅先案内人”という意味を込めてネーミングしたそう。
「家選び、家づくりは旅と同じというコンセプトです。旅先で家が気に入ったら、そのまま暮らしてしまおうという、旅の延長上に家選び、家づくりがあるイメージです。暮らしと旅がリンクする所はAirbnbのコンセプトと近いものがあり、相性がいいと考えています」
自分たちで食材を持ち込んでキッチンで調理し、お風呂に入った後は気持ちいい潮風に吹かれながらウッドデッキでくつろぐこともできる。ここでの非日常のような”試し暮らし”で、贅沢な時間を味わいながら、暮らし心地を体感できる。
住宅アカデメイアが運営する『泊まれる住宅展示場』は蒲郡だけではなく、西軽井沢、蓼科にもある。駅前やインターチェンジを降りてすぐのところではなく、あえてそこから少し離れた場所につくっているのも特徴のひとつだ。
「平日は通勤しやすい都心で働き、休日は景色のいい田舎でのんびりしたいというニーズが増え、最近では、複数の居住空間を行き来するライフスタイル“二地域居住”“マルチハビテーションライフ”が広がりをみせています。軽井沢や蓼科では、セカンドハウスを建てても、使わない間は運用するということも提案しています」
新しい家選びと同時に、新しいライフスタイルを広めていきたいと中井さんは語る。また、そのためにも『泊まれる住宅展示場』の全国展開を進めることに意欲的だ。
「もっと皆さんに知ってもらいたい、素晴らしい地域が国内にはたくさんあります。そこに、『泊まれる住宅展示場』を順番に立ち上げていきたいです。そのエリアでの暮らしを体験できる場所をつくることで、人の流れをつくり、宿泊者の方や住まい探し中の方、ひいては地域の方々や住宅会社さんの活性化に役立ってゆくことが理想のビジョンです。またAirbnbを通じて日本の豊かな場所を海外の人に発見して頂く機会も提供したいです」
試し暮らしができる住宅展示場に旅をすることで、自分らしい住まいや暮らし方を検討している人も(まだしていない人も)、自分らしいライフスタイルやほんとうに好きな家が見つかるきっかけになるかもしれない。
海を囲むようにL字型に並ぶ一軒家が14棟と、アウトドア気分を満喫できる”小屋”が4棟。14棟の一軒家はすべて30坪以内で1500万円前後という規格住宅。値段や広さで選ぶのではなく、自分の好みの空間デザイン、ライフスタイルを優先して選べる。
部屋を壁で仕切らず、ゆるやかな段差でつないだこの家のコンセプトは「お互いの時間をゆるやかに共有するステップフロアハウス」。他にも「自然エネルギーを取り入れた自給自足する家」や、「日本の伝統美が息づく“未来”の平屋」など、異なるコンセプトの、ユニークで多彩な住まいを自由に見学・宿泊体験できる。
これからもいろんなイベントや企業の誘致をしようと考えていると話す中井さん。「キッチンで料理ができるので、料理をしながら婚活パーティをするのもいいですよね。(実際に出会ったカップルが)ゆくゆくは家も買えちゃいますし(笑)」。
レンタサイクルを借りて、近所のマリーナや、近海で捕れた魚介類や地元の野菜などが揃う「ラグーナフェイスティバルマーケット」に食材を買いに行くこともできる。
薪ストーブが設置されているモデルハウスでは、実際に薪をくべてその柔らかな暖かさを体感できる。薪ストーブで揺れる炎を見ながらやすらげるなんて、都会では難しい貴重な体験だ。
住宅展示場内にあるショップエリアには、東急ハンズが運営する「TRUCK MARKET」もある。生活雑貨から、季節のおすすめアイテムなどバラエティに富んだ品揃え。さらに今後、同じくショップエリアに、海を見ながらくつろげるカフェがオープンする予定だ。
中部地区最大級のマリーナ。三河湾でのクルージングやマリンスポーツなど四季折々のマリンレジャーが楽しめる施設。初心者でもヨットに挑戦できる「ヨット体験セーリング」や「ポート免許教室」なども開催している。
住所:愛知県蒲郡市海陽町2-1
TEL:0533-58-2950
魚介や季節の野菜を使った料理が楽しめる地中海レストラン。オマール海老の頭を色とりどりの香味野菜などと一緒に煮込んだ贅沢スープの「ブイヤベースランチ」が名物。ラグーナヒルエリアにあり、明るいテラス越しに三河湾が一望できる。
住所:愛知県蒲郡市海陽町2-8
TEL:0533-59-7766
営業時間:
11:00~15:00(Lo/14:00)、
17:00~22:00(Lo/21:00)
国の天然記念物に指定されている蒲郡のシンボル「竹島」。島の中央部には、日本七弁財天のひとつである「八百富神社」がある。竹島橋で陸地と結ばれていて、写真映えする絶景スポットがたくさん。温かい時期には、潮干狩りをする家族連れで賑わう。