無理なく、心地良くホームシェアにするための全く新しい住まい

オープンハウス 取締役副社長 鎌田和彦さん
オレンジ・アンド・パートナーズ 代表取締役副社長 軽部政治さん
ORANGE DOORについて詳しくはこちら

2018年11月2日掲載

行政との地域活性化プロジェクト等を手がけるクリエイティブ集団、オレンジ・アンド・パートナーズと顧客視点を大切にする不動産会社、オープンハウス。先日、Airbnbとの提携が発表された両社が共同で生み出したホームシェアリング対応型住居、ORANGE DOORがいよいよリリースされる。オープンハウスの取締役副社長、鎌田和彦さんとオレンジ・アンド・パートナーズの代表取締役副社長、軽部政治さんにプロジェクトに至った経緯、ORANGE DOORの意義、将来の展望などを聞いた。

偶然と勢いによって急発進したORANGE DOORプロジェクト。

まず、そもそもの提携並びにオレンジドアの計画に至った経緯からお聞かせください。

右から、オレンジ・アンド・パートナーズの代表取締役副社長、軽部政治さん、オープンハウスの取締役副社長、鎌田和彦さん。

鎌田さん:提携する以前にAirbnb Japanで執行役員を務めている長田英知さんと当社代表の荒井正昭が知り合い、共同で何かができないか、という話をしていたくらいで、当初は非常に漠然としていましたね。ただ、不動産業界は全体的に旧態依然としていて、民泊には否定的な空気がある中、大手と比べて自由度が高いベンチャー企業の我々が先陣を切ってホームシェアリングに取り組んでいくべきなんじゃないか、という議論は以前から社内でしていました。具体的なプランが立ったのはオレンジ・アンド・パートナーズと共にプロジェクトを進めることになってからですが。

軽部さん:地域活性化のお仕事をさせて頂いていくなかで、観光地における宿泊施設の絶対数が観光客のそれに対してかなり少ないという問題があり、縁も所縁もない頃からAirbnbに興味を抱いていたんです。地域活性に必要なのは、その土地にしかない美味しい食べ物と良い眺めの景色、そして良い人。それらがあれば観光は成立すると考えています。つまり、Airbnbにおける宿泊施設は普通の家なんだけれども、宿よりもむしろ地域の文化に根ざしていて、さらにはホストさんというもてなす人がメインになっている。

観光のプラットフォームとして非常に有効だなと感じていたんです。そんなことを考えていたら偶然、Airbnb Japanの田邉泰之社長とお会いする機会が巡ってきたというのが当初の経緯ですね。その際、今お話したような高い可能性や、ただ単に空き部屋を貸すということではなく、家を人と交流できる新しい装置と考えそれを可能にするものをつくることができれば、これまでとは異なる観光の形が生まれるのでは、といったことを伝えたところ共感して頂けたんです。

それで、具体的にどうしようか、と考えていたら、Airbnb側からオープンハウスさんと一緒にやりませんか、という話が来てこの度の提携に至った、と。

鎌田さん:当初の段階ではマンションの方がホームシェアに馴染むかなと考えていたんですが、マンションの管理規約がどんどん変更され、宿泊施設として利用するにはやはり難易度がかなり高いと感じていました。そんな時に軽部さんとお会いした際、ホームシェアを意識した家をつくりたいと仰ったので、だったらそれをまずやってみるか、となったんです。極めてノリというか……(笑)。

軽部さん:名刺交換をして話をしはじめてから10、20分後くらいには、じゃあやりましょう、ということになりましたからね(笑)。

鎌田さん:ただ、自分が住まいながらゲストの方をお迎えし、空間をシェアするという構造は法律とも馴染むし、良いんじゃないかと直感的に思い合意をしたんですよ。

確かに、空間をシェアしやすいという前提の家があれば、すんなりアプローチできるかもしれませんね。

軽部さん:僕はAirbnbが日本にきてくれたおかげで、民泊の目的が変わってきていると思うんです。今までは、空いている部屋があってもったいないから、それを回してお金を稼ぐことが第一義で、その副産物として出会いがあれば良いな、くらいだった。しかし今は、高齢化社会のなかで都会に住む人、近所との交流も少ない人が多くなってきている現状があって、そういう人にとって誰かと出会い、もてなしをしたり、コミュニケーションをすることが生きがいになりつつある。

その結果として自分の生活が多少豊かになれば尚良い、といった考え方になってきているはずなんです。民泊という言葉に悪いイメージをもっている人は未だに少なくないかもしれないけれども、我々がこれからやる取り組みによって変えられると信じていますね。

ホストさんたちの意識が変わったとしても、おそらく社会的なイメージの払拭は難しいですよね。そのために必要なのが、おそらく他の人の目に触れやすいハード、街の景色が変わること。つまり、ORANGE DOORが良いきっかけとなるのではないかと想像しています。

軽部さん:今まで民泊が行われていた住居は、いうまでもなく自分の暮らしを送るためにつくられたものだった。そこに人が来るというのは時として楽しいけれども、気を遣う瞬間もある。その無理がストレスを生み、結局、勤勉な日本人の国民性に合わなかったところもあったのでは、と考えられます。

鎌田さん:ORANGE DOORは、プライベート空間とリスティングの間に鍵つきのドアを設けていて、もし会いたくないという場合はロックすれば良い。一方で会いたい時は開解放することもできて、さらには二階の共有スペースに会話を手助けしてくれるツールや、ゲストと一緒に料理をすることができる対面式のキッチンを設けています。もてなすことが心地良くなるための設計になっているのと同時に、息苦しくなった時にはプライベートな状態に戻すこともできるわけです。

軽部さん:もしホームシェアをやめたとしても、その後、例えば両親に一階に住んでもらい三階を自分たちの家族用というふうに、二世帯住宅のように使うこともできる。そういった将来的な発展性もORANGE DOORはもっているんです。

使い方は自分次第であり、自由にカスタムできるということですね。

軽部さん:カスタムという点ですと、何でも物を置くことができる棚を完備していることも特徴です。ゲストにお勧めしたい日本土産や自分のバックグラウンドとなる思い出の品などを置けば、それも会話のきっかけになります。あと、レタールームと呼んでいるスペースを用意していて、そこには筆があって書道を楽しめるようになっている。そこでゲストさんが自分の友達や家族に手紙を書き、部屋にあるポストに投函すると、ゲストさんが帰った後、ホストさんが郵便局に届けにいくといった、些細なギミックなんだけれども日本文化を家のなかでちゃんと楽しめる工夫も施しています。

鎌田さん:そういったアイディアは企画会社ならではの発想ですよね。うちのようなハード側の会社からは決して生まれません。

軽部さん:でも、オープンハウスは私たちが言った発想を一度も無理と言わなかったんですよね。すべてを実現しようと努めてくれました。

土地ごと、ホストさんごとに段々と変化を帯びていく家。

鎌田さん:ORANGE DOORは我々にとってもひとつのチャレンジだったんです。オープンハウスの主流の商品は比較的、土地面積が狭いのに対して駐車場を完備し、家族にミニマムだけれども快適かつ機能的に過ごせる空間を提供している点を特徴としています。しかし、ORANGE DOORの場合は通常よりも面積を広く取り、駐車場もなくしています。

それは何故でしょう?

鎌田さん:家族に加えゲストもいる生活を前提にしているため、住空間を優先したというのが第一の理由ですね。駐車場のスペースを確保すれば、自ずと空間が狭くなりますから。

軽部さん:それと、将来的に1000、2000棟と売れる商品になれば良いとは考えているものの、最初から多くの方から支持され、爆発的に売れるとは思っていません。おそらく、はじめは車や自転車といった移動手段などを含めた、生活に関わること全般においてシェアを意識しているホストさんが住むだろうと仮定し、駐車場をあえてなくしたんです。

ただ、建物の立地によっては最寄りの駅までゲストさんを車で送迎するというホストさんもいらっしゃると考えられます。そういったケースは想定されなかったのでしょうか。

鎌田さん:いずれはロケーションごとに設計を変える必要が出てくるでしょうね。ただ、今回は駅から徒歩2、3分の立地の良いところを考えているので、必要ないと判断しました。

軌道に乗ったら、段々とバリエーションを増やしていけば良いということですね。

軽部さん:そうですね。土地だって常に真四角とは限らないですし、そのあたりの応用力、ノウハウはオープンハウスさんがおもちですから、これから柔軟に変化していくでしょう。

鎌田さん:先ほど軽部さんが仰った仮説がどれだけ成り立つかもわからないですからね。そもそも、ゲストルームとプライベート空間の境のドアに鍵が必要なのかどうかもわからないし、とにかくやってみないと正解は見えてこないでしょう。我々がつくったものはあくまで器で、中身をホストさんがどう使い、ソフトの部分を考えてくれるかが、これからの進化のために重要になってきます。

ORANGE DOORによって、人生の選択肢が広がる。

先ほど、想定オーナーのお話が出てきましたが、ターゲット像について具体的に教えていただけますか。

軽部さん:ターゲットはふたつあって、ひとつはニューファミリー、もうひとつはお子さんが成長し仕事をリタイアされたご夫婦。つまり、幅広い層を想定しているので、最近流行っているモダンなテイストをベースにしながら和の要素もしっかりと取り入れた、誰もが好ましいと思ってもらえるデザインにしました。

鎌田さん:これまでの我が社の商品には和室がほとんどなかったんです。つまり、そういうものが従来のお客さんに好まれなかったわけです。ただ、畳には汚れにくく、スーツケースを引いても傷がつきにくい新建材を使っているので、実用性の高いものになっています。現代のライフスタイルに合わせながら和風を取り入れた、オープンハウスにとって珍しいパターンのものになっています。

最後に今後の展望をお聞かせ下さい。

軽部さん:10数棟くらいのORANGE DOORの集合によって新しいコミュニティが生まれ、さらにはそこに他のシェアリングビジネスがアドオンされ、その地域だけで観光がきちんと成り立つようになれば理想ですね。

鎌田さん:確かに、箱だけでなく他のシェアリングビジネスのことももっと考えた方が良いでしょうね。私もORANGE DOORを先ほど話に出た移動手段などもミックスした商品にしていきたいと考えています。そういった将来的なことを踏まえながら、Airbnb、オレンジ・アンド・パートナーズさんと共同でこのプロジェクトをどんどん発展させていきたいですね。