Airbnbと提携し、山陰の特別な旅経験を世界に発信

一般社団法人 山陰インバウンド機構
代表理事 福井善朗さん

「2010年代頃から、いわゆる“観光地巡り”ではなく、地域の人々と交流し、地域の文化や食、風習を体験する旅を好む人が急増している」と話すのは、今回お話を伺った、日本版DMO(ディスティネーション・マネージメント・オーガナイゼーション)である「山陰インバウンド機構」の福井善朗さん。近年、多くの国や地域で、滞在・体験型の旅を支援する「DMO」機構が活動を始めており、鳥取と島根を拠点に活動する彼らも、Airbnbとパートナーシップを結び、新たな試みを始めているという。その背景や、農村漁村滞在の現在のニーズ、魅力について伺った。

鳥取県・島根県の知られざる魅力を“特別な旅”として提供。Airbnbとタッグを組み世界に通用する観光地を目指す「山陰インバウンド機構」。
鳥取県・島根県の知られざる魅力を“特別な旅”として提供。Airbnbとタッグを組み世界に通用する観光地を目指す「山陰インバウンド機構」。

観光用に作れらたものではない、
農山漁村の貴重な体験を観光資源に

Q:まず、「山陰インバウンド機構」とはどんな活動をしている団体か、教えてください。

2016年4月に設立された、山陰エリアを観光地としてブラッシュアップし、地域を活性化させている団体です。社名にあえて「インバウンド」という言葉を入れたのは、外国人観光客に山陰の魅力を発信し、実際に足を運んでもらうためです。山陰エリアは『古事記』や『日本書紀』の舞台ですし、教科書にも掲載されている出雲大社、鳥取砂丘をはじめ、玉造温泉などの有名な温泉地も数多い。ただ、日本人にとって山陰エリア(鳥取県、島根県)は、県の知名度が低いこともあり、いわゆる観光に関するランキングでは常に下位にいるんです。さらに過疎化や高齢化の問題もあり、このまま山陰エリアを放置していると衰退する一途を辿るという危機感を覚えました。

私たちはこの状況を打破するために「観光」を盛り上げることが第一と考えています。私達のメンバーと地域の方々で、英語の講習会、サービスや商品づくり、ITの導入など、20年先を見据え、山陰が発展していくためのセミナーも積極的に開催しています。

Q:観光を盛り上げる一環として、Airbnbのホスト開拓、教育、支援をスタートしたと伺いました。
なぜAirbnbとパートナーシップを組むことにしたのでしょうか?

そうですね、観光と一言で言っても、私達のミッションは多数あります。そのひとつが「2020年までに40万人泊を達成する」というもの。ただし現在、山陰エリアの観光客泊数は年間16万人泊。宿泊拠点も足りません。特に魅力のある観光資源となるはずの、農山や漁村エリアに宿泊できるところがほぼないのが現状です。この課題を解決するためのベストなパートナーがAirbnbだと確信しました。

山陰地方を歩くと、日本の原風景があちこちに残っており、心を動かされる人が多くいらっしゃいます。自然と呼吸を合わせるように人が何百年も暮らし続けている風景。これはいわゆる有名な観光地にはない山陰の最大の魅力だと感じています。私達はこれを、観光客の皆さんに感じていただきたいと強く願っています。

そのためにも、191カ国以上で400万件近くのお部屋が掲載されているという、想像を超えたグローバルプラットフォームであるAirbnbと協力して地域を盛り上げていきたいと感じました。Airbnbのメリットは、宿泊予約から決済までを一貫して行えることです。そして、ホストの負荷が極力ないかたちで、山陰エリアでの農山漁村ステイを観光プランとして全世界に発信できる。今、Airbnbと地域のみなさんと一緒に準備を進めているところです。

「山陰インバウンド機構」では、地域の出版社とマップを作ったり、地元の食品メーカーとコラボしたオリジナルの商品開発なども手掛けているという。
「山陰インバウンド機構」では、地域の出版社とマップを作ったり、地元の食品メーカーとコラボしたオリジナルの商品開発なども手掛けているという。

地元の方は気づいていない魅力を
観光ビジネスとして育てていく

Q:教育や支援など、具体的にどんなことを行っているのでしょうか?

山陰地方で暮らしている方たちは、控えめというか、山陰が特別な魅力を持っていることに気づいていらっしゃらないことが多いんです。自分たちの“普通”が、外国人の方々や他エリアに住む日本人にとっては“特別”だということに気付いていただくことから始めています。

その手段のひとつとして、アメリカ人ジャーナリストの方に山陰を巡ってもらい、率直な意見を伺いました。すると、広大な風景で有名な鳥取砂丘の帰りにふらっと立ち寄った『鳥取砂丘 砂の美術館』に感動されていました。また、島根県の伝統芸能である『石見神楽』も気に入って頂けたというのです。特に『石見神楽』長い時間かけて大切に守り続けてきた神事であって、地元の方にとっては観光資源という意識はなかったのです。こういうコト・モノ・ヒトが、山陰地方には無数にあり、これらはきっと山陰の観光資源になり得ると実感しました。

また小規模でスタートできるビジネスの育成にも力を注いでいます。民泊やワークショップの提供、体験型プログラム、クラウドファンディングも含めて資金的な面でのお手伝いなどです。私達のメンバーの中には地元の銀行の方もおりますので、ビジネススキーム作りや資金調達面の支援体制も整えています。地域発信型のビジネスを育てたいという思いは、皆さんとても強く、郷土愛の深さを感じます。

Q:現在、農山漁村に限定してホストを開拓されているそうですが、その狙いとはなんでしょうか?

現在の稼働例は米子市内から車で40分、築150年の歴史を持つ古民家「ときわすれ清水屋(Shimizuya,old Japanese life)」。
現在の稼働例は米子市内から車で40分、築150年の歴史を持つ古民家「ときわすれ清水屋(Shimizuya,old Japanese life)」。旬の素材を囲炉裏で焼いた食事が好評で、季節やタイミングによってはキノコや山菜採りなども体験できる。外国人観光客へ、ゆったりとした時間と味を“おすそわけ”。

山陰に暮らしてきた方々の“普通”が、農山漁村にまだ多く残っています。それらを世界に発信し、宿泊体験を中心に提供していきたいからです。山陰エリアでは「おすそわけ」という言葉を使われる方が多いのですが、旅に来ていただいた方には、農山漁村に宿泊して日本の原風景や文化を肌で感じながら、懐かしい感覚や美味しいものの「おすそわけ」をお土産に、唯一無二の体験をして頂きたいと考えています。このように、地域の強みを生かした観光ビジネスというものを育てていくのが私たちの使命です。

島根半島の東端、三方を海に囲まれた美保関町は、聖なる岬と呼ばれてきた地。
島根半島の東端、三方を海に囲まれた美保関町は、聖なる岬と呼ばれてきた地。国譲りの神話の時代から、北前船で栄えた江戸時代、そして今日まで海に生かされてきた街。えびす様の総本宮「美保神社」の参道入り口から伸びる『青石畳通り』沿いを中心に古いお店民宿が立ち並ぶ姿は、まさにパワースポット。遊覧船でのクルージング、釣り、近隣の歴史散策、国立公園のウォーキングも移動せずに楽しめる。

Q:最後に、今後の活動についてお聞かせください。

まずは、地域の人材育成が急務と考えています。島根県、鳥取県の中でも、里山、農村エリア、漁村エリアとメリハリをつけながら観光ゾーンをつくっていくイメージを持っていますので、そのエリアをマネジメントや運営ができる人を育成する予定です。加えて、スポーツや健康プログラムの専門家と意見交換会をして、宿泊した方が体験できる魅力的なプログラム作りも考えています。

山あいが多く、あちこちでトレッキングやマウンテンバイクもできますし、長い海岸線では各地で海水浴もできます。こうした地形を生かして、鳥取の皆生ではトライアスロン大会も行われています。ここにある資源をどう生かすかを考え、さらに膨大なデータや経験をお持ちのAirbnbとテストマーケティングをし、観光資源に育てていく予定です。山陰地方は非常に魅力的な土地です。山陰が日本を代表する観光地になると確信し、この魅力を全世界に広めていくべく活動を続けてゆきます。

一般社団法人 山陰インバウンド機構

一般社団法人 山陰インバウンド機構
「一般社団法人 山陰インバウンド機構」は、“山陰”が世界に通用する観光地となるよう、官民が連携し、観光地経営の視点に立った観光地づくりの舵取り役としての役割を果たす日本版DMOとして、鳥取県・島根県両県により設立された。
日本人の心のルーツである神話の世界、古の佇まいが残された“山陰”は、外国人観光客に魅力的な観光資源に恵まれており、今後、外国人観光客が大きく増加する可能性を秘めている。「一般社団法人 山陰インバウンド機構」は、地域と協力し、また、他地域とも連携しながら、山陰ブランドの構築や情報発信に取り組んでいる。

DMOはDestination Management Organizationの略であり、各方面と連携しながら地域にある観光資源を利用して観光地域作りを行う法人を指す。

山陰インバウンド機構 x Airbnb
一般社団法人 山陰インバウンド機構(代表理事:福井善朗、以下「山陰インバウンド機構」)は、Airbnb Japan株式会社(本社:米国カリフォルニア州サンフランシスコ、以下「Airbnb」)と、山陰地方を訪れる日本国内外からの旅行者数を増大させる観光促進施策を推進することを目的とした覚書を締結。日本版DMOがAirbnbと連携するのは初のこと。今回の提携を通じ、山陰インバウンド機構とAirbnbは、より多くの観光客を山陰地方に誘引するため、農山漁村滞在を受け入れるホストの開拓、教育、支援を実施してゆく。