多数の集客が見込まれる大規模なイベントが開催されると、課題となるのが宿泊施設の確保です。その不足を解消する手段として今注目を集めているのが、「イベント民泊」の活用です。
パソナは今年8月、日本三大盆踊りの一つである徳島の「阿波おどり」にて、同市からイベント民泊の運営を委託され事務局を務めました。主に、自宅提供者(ホスト)の募集・審査・研修、宿泊希望者(ゲスト)の募集、ホストとゲストのマッチング、阿波おどり期間の24時間相談窓口対応などを行いました。最終的に、採択した部屋数は31件(提供可能部屋数:57件)、延べ宿泊可能人数302名に対して、8月11日~16日までの6日間で実際に稼働した部屋数は38件、延べ宿泊人数は273名に上りました。初年度の事業ということもあり、自宅提供者の募集が6~7月の2ヶ月間、宿泊希望者の募集が8月に入ってからの10日程度と、非常に短い準備期間でしたが、受入可能であった9割近くの自宅提供者と宿泊希望者をマッチングすることができました。
民泊サービスを初めて利用したというゲストからは、「阿波おどりを楽しむとともに、ホストとの交流も楽しむことができた。次回はホストに会いに徳島に来たい」との声が寄せられました。またホスト側からも、「どんなゲストが来るのか不安もあったが、阿波おどりを楽しんでいただくことができ、普通では出会えない方々に会えて貴重な機会になった」との感想がありました。「継続して民泊にチャレンジしたい」との声もいただき、ゲスト・ホストともに高い満足度を得ることができました。
また今回のイベント民泊は、アメリカ、フランス、イタリア、スウェーデン、台湾、中国など幅広い国のゲストが宿泊したことも特徴的でした。イタリアから来たゲストは、布団を敷いたり、ホストから阿波おどりのレクチャーを受けたりとホストとの交流が生まれ、「ホテルはどこに泊まっても同じだが、民泊は日本の文化を知ることができ素晴らしい体験となった」と楽しんでいる様子でした。
阿波おどり期間中の慢性的な宿泊施設不足については、既存の宿泊施設の方々も認識しており、なかにはイベント民泊の自宅提供者募集を応援してくれる宿泊施設関係者もいました。施設によっては1年前から満室となっている場合もあるため、これまでは多数く寄せられる問い合わせ電話にお断りをしなければいけなかったそうです。しかし今回、市がイベント民泊を開催する旨を案内することができ、宿泊希望者に対して他の手段を紹介できるようになった、との声を頂きました。
今後の課題としては、「イベント開催前にいかに早くホスト募集を行い、宿泊予約を確定させるか」という点です。阿波おどりはお盆期間中の開催のため、宿泊予約が先に確定しないとホスト自身の他の予定が立ちにくいという問題がありました。今回は地域における「民泊」自体の周知がまず必要だったため、ホスト募集に時間を要しました。準備期間を長くとることが出来れば、ホスト・ゲスト双方が増え、事業効果が高まることが期待できるでしょう。
自治体が独自で運用してきたこれまでのイベント民泊は、イベント時にさらに忙しくなる自治体が民泊業務に時間を割くことが難しかったため、規模のある成果を残せずにいました。今後は、今回のような官民連携が求められていくでしょう。
関連資料
「徳島市阿波おどり」期間のイベント民泊を推進
パソナ 徳島市『イベント民泊実施業務』 自宅提供者の募集・研修等を実施
http://www.pasonagroup.co.jp/news/index112.html?itemid=2163&dispmid=798
<株式会社パソナ ソーシャルイノベーション部>
パソナグループは、「社会の問題点を解決する」を企業理念に、一人ひとりのライフスタイルに合わせた働き方を提案し、雇用創造に取り組んでいる。また、多様な才能を持った人材が集まって地域産業を活性化させる“人材誘致”による独自の地方創生事業も、重要な事業の柱として位置づけている。
株式会社パソナ ソーシャルイノベーション部では、観光立国、若者雇用、東北復興、海外展開、地方創生、シェアリングエコノミーなどをテーマにして、行政・企業・NPOなどと連携した事業を展開。地方創生や、新しい働き方の創造を推進し、雇用創造・産業振興プロジェクトの開発に取り組む。農林水産省と連携した『農泊』では、ホスト・農泊コーディネーターの育成事業を行う。『一般社団法人宮城インバウンドDMO』や東京駅前のコミュニティ型の観光案内所である『TRAVEL HUB MIX』など訪日外国人に日本の文化を広める事業も行っている。