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日本中に、新しい旅のビジネスの可能性を。
2018年6月14日 Airbnb Dayレポート。

  • 2018年6月29日

2018年6月15日、住宅宿泊事業法の施行を機に、日本ではホームシェアビジネスの可能性が飛躍的に広がろうとしている。これから日本に根ざす産業を創造し、ホームシェア関連市場を一緒に成長させていきたい。そのためにAirbnbとしての世界初となるアライアンス組織「Airbnb Partners」を創設。参画している企業は現在36社。航空、通信、保険、不動産、人材派遣、全国に店舗をもつコンビニエンスストア、電気店、はたまた日本独自カルチャーを創造するクリエイティブチームなど、実に様々だ。

「Airbnb Partners」も含め、Airbnbの今後のビジョンが発表されたイベント2018年6月14日「Airbnb Day」の模様を振り返っていきたい。

Airbnb 共同創設者兼最高戦略責任者、ネイサン・ブレチャージク氏

「行先で家を借りて泊まるという新しい旅の形は、ゲスト、ホスト、地域の皆さまなど、たくさんの方々のおかげで成り立つものです。お互いに心を開いて向き合えば、はじめての土地も旅する人にとって、ホッとくつろぎ、楽しめる場所になる」。このAirbnbのコンセプト、想いがこもったナレーションの終わりと共に、Airbnb創業者のネイサン・ブレチャージク氏が最初に登場。はじめにネイサン氏が語ったのは、約10年前の旗揚げから拠点が位置するサンフランシスコでの成功、日本への展開の経緯、ホストのコミュニティによってリスティングの数が全世界で500万室になり、これまで3億人が利用してくれたことへの感謝の思いだった。その上でこれからさらに重要になってくるのが、都会だけではなく地方で活躍し、古くからある日本文化を伝えているホストたちだと話す。

「日本のユニークな文化はAirbnbとよくマッチしていると感じています。観光地から離れている場所でもオリジナルの習慣が残っている。そういった潜在能力を引き出し、支援をしていきたい。そうすれば、日本人への恩恵をもらすことができ、地域の活性化、高齢化、地方の人口減少にも貢献ができると考えています。そのために、パートナー企業の力を借り、ホスト登録の手助け、法律の専門家によるセミナーの開催等を積極的に行っていきます。住宅宿泊事業法は良いターニングポイントです。今後、日本の市場にコミットし続け、長期的な投資を行っていく予定です」

ネイサン氏のスピーチ内で紹介された、「Airbnb Plus」と呼ばれる新グレードのサンプルルーム。認定されると様々な特典がつき、ホストのモチベーションアップにも繋がる。
Airbnb Japan代表取締役、田邉泰之氏。

ネイサンの言葉を受け、次に登壇したのはAirbnb Japan代表取締役の田邉泰之氏。新しい旅の希求は多様な広がりを見せる。まず、どこかに行きたい、というシンプルな欲からはじまり、次に誰かと会いたい、話をしてみたい。その場所でしか起こっていないことに触れたい。そこでしか食べられない味と巡り合いたい。コアな文化に身を置きたい、と段々と拡張していく。その枝分かれに必要になってくるのが、道標となる宿という点やそれを繋いでいく交通手段などのインフラストラクチャー、そして、“点”の安全、安心を支えるサービスである。

田邉氏はAirbnbを「あくまで黒子、プラットフォームで、すべてをまかなうことは不可能」だと話す。例えば、ゲストとのメッセージのやり取り、チェックイン/アウトの管理、部屋の清掃等といった業務。保険、交通、いざという時のリカバーをどうするか、そして住宅宿泊事業法によって、ホスト側の絶対条件になった行政での手続き。それぞれに対するエキスパートはすでにいる。そのエキスパート(=Partners)たちと連携しながら、ホストへの間口を広げることができれば、自ずと充実した“点”が増え、ゲストの希求を満たすことにも繋がっていく、というのが、Airbnb Partnersの根本的な理念と説明する。

カルチュア・コンビニエンス・クラブの代表取締役社長兼CEO、増田宗昭氏。

Airbnb Partnersを代表して増田氏が登壇。増田氏はカルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)の立ち上げ当初から「多様なライフスタイルの追及を図ってきた」と語る。その象徴的な事例がTSUTAYAであり蔦屋書店でもあるわけだが、それらがAirbnbと共通するのは、人によって異なる感性に合わせられる受け皿を用意している点だと考えられる。TSUTAYA並びに蔦屋書店に豊富なバリエーションの映画や音楽や本があるように、Airbnbはワクワクする気持ちを駆り立てる、たくさんのユニークなリスティングをラインナップしている。豊富な選択肢からチョイスする自由は、何よりも楽しさを生む。まず、そのことを知ってもらいたいと増田氏は訴える。

「Airbnbで人気の街は、東京、パリ、大阪。日本の経済注目度は落ちているが、日本文化は世界から高い評価を受けている。今年中に、Tポイントサービスを展開していくことで、ホストの数を増やし、6,700万人を超えるT会員に、新しい旅の形を提供したい。パートナーの皆様と一緒に、新しい旅のライフスタイルを提案していく」と締めた。

第1部パネルディスカッションの登壇者。右から、全日本空輸の代表取締役副社長、志岐隆史氏。損保ジャパン日本興亜の専務執行役員、桑田憲吾氏。ファミリーマートの代表取締役社長、澤田貴司氏。みずほ銀行の専務執行役員、山田大介氏。

「Airbnbがこの業界の第一人者だとしたら、今後もホームシェアリング業界全体をリードしてもらいたい、日本に定着させて欲しい、というのが田邉さんに期待していることです。日本でまだまだ一般的ではないシェアリングサービス(宿泊も車も)だが、今後の日本に重大なインパクトを与えるですので、期待していますよ」と、みずほ銀行の専務執行役員、山田大介氏。

今回の会場、渋谷ヒカリエホールのエントランスに設置された、ライゾマティクスによるインスタレーション。他国と日本を様々なケースで比較した数値、日本の各地にいるホストの肉声と映像で構成されている。
第2部パネルディスカッションの登壇者。右から、オープンハウスの取締役副社長、鎌田和彦氏。オレンジ・アンド・パートナーズの代表取締役副社長、軽部政治氏。CCCクリエイティブの代表取締役会長兼CEO、谷川じゅんじ氏。Peach Aviationの代表取締役CEO、井上慎一氏。ライゾマティクスの代表取締役社長、齋藤精一氏。

「ホームシェアリングは価値観の共有だと思っています。今日の会場もそうですが、コミュニティーの本質は居心地の良さ。鍵掛けなくて良い家とか、畑の野菜を分け合って暮らすとか、ちょっといつもと違う暮らしに身を置くことで、価値観が変わることがあるかもしれない。人生100年時代に、仕事リタイア後の40年間に、旅をしようという思いになった時に、 Airbnbを使うことで、人と人との関係が構築されていくと感じています」と、CCCクリエイティブの代表取締役会長兼CEO、谷川氏。

当日は多くのオーディエンスが訪れ、登壇者の発言に真剣に耳を傾けていた。
京都の都市部から離れた古民家をイメージしたブース。その地域ならではの“文化”や“暮らし”を体験できる。ブースの中でくつろぐ来場者。
来場者が自由にピックアップできるケータリングスペースもイベントに華を添えていた。