ホテルの枠に収まらない
人が集う拠点となる場所。

世界にも地元にもオープンに開かれた場所に人々が集い、コミュニティを形成し、自発的に店ができ、芸術が生まれていく。「人が集う拠点」が描く未来とは、人が一時的に通り過ぎるのではなく、文化を表現する場所になっていくこと。これを箱根という土地で実現しようと試みるホテルがある。

Airbnb（エアビーアンドビー）と2017年2月にコラボを開始したNEST INN HAKONEは、箱根町・仙石原の国立公園内にある。レストラン棟、レセプションとカフェが入る棟、本やドリンクを飲みながら寛げるレクリエーション棟という3つの建物がウッドデッキで繋がれ、訪れた人は鳥の声がさえずる静けさの中を移動する。建物内にいてもあらゆる窓から豊かな自然を見ることができ、忙しない日常で鈍った五感が癒され、覚醒していくような感覚を覚える場所だ。

「ここに来る方には、”休む”のではなくて“活動”をしてほしいですね。身体を動かすアクティビティはもちろん、考えを巡らせる、自分を見つめ直すことを含めての活動です。そういう“考える”活動をする時間は、なかなか普段の生活の中では無いですし、こういった自然豊かな環境の中にいるからこそできることだと思います」

そう話してくれたのは、当ホテルを運営するマイルストーンターンアラウンドマネジメント株式会社の代表を務める早瀬恵三さん。同社は盛岡市や姫路市での百貨店再生事業も手掛けているが、そこに一貫している理念は「単なる再生ではなく、人が集まる拠点をつくること」。NEST INN HAKONEもその理念に基づき、他のホテルとは一線を画すユニークな試みを行っている。地元の新鮮な食材を薪グリルで調理するレストランや厳選されたコーヒーやワインを飲めるカフェは宿泊者以外も利用でき、不定期で開催されるイベントでは地元の人も宿泊者も交じって交流を深める。Airbnbを通して予約した宿泊者は、1日目にパン生地を仕込み発酵させ、2日目の早朝に形成し焼き上げるという、他に類を見ないパンづくり体験をすることも可能だ。

「Airbnbが目指すところと我々の目的は基本的に同じです。単なるOTAビジネスとは違う、文化的表現を志向しているんです。文化があるところに”体験”として世界中の人に訪れてほしいと、それを素直に会社の目的にしているんですから、一緒にやる意味があると確信しています」

今後もAirbnbと連携し、体験型のイベントやコラボレーション企画を積極的に行っていきたいと早瀬さん。連綿と紡がれてきた歴史をもつ箱根と、そこに少しずつ、でも確実に変化をもたらすNEST INN HAKONEという拠点の存在は、Airbnbで訪れる世界中のゲストと地元との間に新たなコミュニティを生み出す。それは将来、日本の地方の新しい在り方を示す存在になるかもしれない。