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フランク・ロイド・ライトの設計思想を継承する
モデルハウスをホームシェアリングに活用。

日本オーガニックアーキテクチャー株式会社 スーパーバイザー 竹内友也さん
株式会社村岡組 代表取締役社長 村岡洋平さん

「普遍的な形である自然の姿に学び、建物が環境と溶け合いながら、住む人にもフィットするようにデザインすること」の重要性を唱え、ル・コルビュジエ、ミース・ファン・デル・ローエとともに近代建築の三代巨匠のひとりに数えられる建築家、フランク・ロイド・ライト。このたび、彼の設計思想を受け継いだ住宅ブランド「オーガニックハウス」のモデルハウスを、ホームシェアリングに活用する事業がスタートする。同ブランドを展開するオーガニックアーキテクチャー株式会社の竹内友也さんと、ホームシェアリング活用の第1棟目となるモデルハウスを建てた株式会社村岡組の村岡洋平さんに話を伺った。

「オーガニックハウスのコンセプトは“世代を超えて住み継がれる家”。最大の特徴は、フランク・ロイド・ライト財団からのライセンスを受け、ライトが提唱する“有機的建築”の理念に沿って日本の暮らしに合う家をデザインし、全国展開していることです。有機的建築の特徴である自然の姿に学ぶ普遍的なデザインは、流行に左右されることがないので、100年経っても愛着をもって住み継いでいただけると考えています」(竹内さん)

しかし、ライトの故郷であるアメリカと日本では、住宅の築年数に対する価値観に大きな違いがある。アメリカでは一般的に年月が経つとともに建物の価値は上がるが、日本では建てた瞬間から価値が下がっていく。オーガニックハウスは、そんな日本の住宅への考え方を変えるべく、年月を重ねるほどに価値が上がるような住宅づくりを目指しているのだ。

「そのためにもっとも重要なのは建築資材の質です」と語るのは村岡さん。デザインはもちろん、健康や住み心地のよさにつながる上質な素材選びもオーガニックハウスの特徴のひとつだ。
「私たちは徹底して健康に配慮した家づくりを行っています。抗菌・消臭・調湿効果に優れたスペイン漆喰をはじめとする自然由来の素材を採用し、体に負担をかけてしまう接着剤などは使いません。そういった考えがオーガニックハウスと合致したので、4年ほど前からビルダーとして加盟しています」(村岡さん)

秋田県横手市にあるモデルハウス「モルディナ」。全館空調システムを採用しているためオープンな間取りが可能に。
建材に無垢材を使用するのはもちろんのこと、照明にいたるまで職人がひとつひとつ手づくりしている。

そんなこだわりあふれる家づくりで支持を集めるオーガニックハウスが今回、ホームシェアリング事業をスタート。第一弾として秋田県横手市にあるモデルハウスを活用することになった。その背景はどのようなものだったのだろうか。

「実は、モデルハウスの平日の稼働率は5〜10%となっていて、90%以上が土日に集中しているんです。平日にほとんど使われないのではもったいないですし、せっかく高品質な建物なのだから、もっと多くの人にシェアしたいという気持ちがありました。しかも、モデルハウスには家具や家電も揃っています。宿泊施設として消防設備を設置したり、登録申請したりするほかはイニシャルコストがかからないので、ホームシェアリング事業をスタートしやすかったということもありました」(竹内さん)

「特にこのモデルハウスは水道やガスも整備されており、いつでも住める状態になっていたのでホームシェアリングに転用しやすかったんです。自信をもってお勧めできる家なので、地域に開放したいという想いも強かったですね。弊社では別のモデルハウスで料理教室や映画の上映会を開催したこともあり、その延長線で宿泊での利用も可能だと考えました」(村岡さん)

壁には漆喰のなかでも特に抗菌効果が高いスペイン漆喰を採用。木材や陶製タイルなど、建材はすべて自然由来。

モデルハウスを1時間見学するよりも、モデルハウスで開催される3時間ほどの料理教室に参加するほうが、その住宅の快適性や機能性を実感できるはずだ。さらに、実際に宿泊してみて、キッチンで料理をしてみたりリビングで寛いだりしてみれば、より具体的にその住宅での暮らしを思い描けるだろう。

「料理教室に参加いただいた方の多くが、参加後に弊社で家を建てています。やはり建物内で数時間過ごすことで、何らかの心地よさを感じてくださったんだと思います。肩こりや喘息といった体の不調が和らいだとおっしゃる方もいらっしゃいます」(村岡さん)

モデルハウスでのホームシェアリング事業を展開する日本オーガニックアーキテクチャー株式会社の竹内友也さん。
住むほどに健康になる家づくりについて、大学との共同研究も進める株式会社村岡組の村岡洋平さん。

ホームシェアリング事業を始めるにあたって、日本オーガニックアーキテクチャーは新市場を創る目的のもと、Airbnb Partnersへも参画した。
「協業を決めたのは、Airbnbが世界的なブランドだからです。弊社としても、世界文化遺産に登録されたライトの建築の設計思想を受け継ぐ世界的なブランドだという自負があります。このホームシェアリングが、その良さを少しでも多くの方に知っていただくきっかけになればと思っています」(竹内さん)

また、村岡さんはモデルハウス利用者に建物の良さだけでなく、土地の魅力も感じてもらえることも期待しているという。

「ここ秋田県横手市は、特に冬場はウインタースポーツ目的で訪れる海外からの観光客も多いんです。秋田空港だけでなく花巻空港も利用可能であることに加えて、電車でも車でもアクセスしやすい立地なので、横手を拠点に旅するのもおすすめですね。私も以前、ゲストとしてAirbnbを利用したことがあり、その気軽さや便利さに大きな魅力を感じました。家族旅行など大人数の旅には、モデルハウスの一棟貸しは向いていると思いますよ」(村岡さん)

秋田県横手市にあるモデルハウス「モルディナ」のリビングルーム。3㎝もの厚みがあるパイン材の床が素足に心地いい。
モデルハウス「モルディナ」の外観。ライト建築ならではの水平ラインを強調しつつ、スタイリッシュなデザインに。

オーガニックハウスのホームシェアリング事業は、この村岡組によるモデルハウスを皮切りに、今後は千葉や富山など全国で展開する予定だ。住宅メーカーがホームシェアリングをスタートすると聞くと、別業種に新たに参入するイメージが強いが、実は住宅事業と宿泊事業は企業運営の両輪となり得ると、竹内さんと村岡さんは語る。

「モデルハウスとしての機能はそのままに、宿泊施設としても使用できるという点が大きいです。しかも新たな人員を用意することなく、住宅事業と並行できるのは不在型ホームシェアリングのメリットですね」(竹内さん)

「モデルハウスの建設にはかなりの費用が必要なので、ホームシェアリングで少しでもプラスがあれば、モデルハウスが建てやすくなるのが利点。今後は、宿泊機能を備えたモデルハウスを増やしていきたいと思っています」(村岡さん)

オーガニックハウス ブランドページ
https://organichouse.jp

株式会社村岡組
http://www.muraokagumi.jp

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