Airbnbを通じ、世代を問わず
“働きたい”という気持ちを支える。

株式会社パソナ ソーシャルイノベーション部副部長
加藤遼さん

2017年9月15日掲載

去る2017年6月9日、住宅宿泊事業法が可決・成立した。早ければ来春に施行され、本格的に住宅宿泊が解禁になる予定だ。そんな今、株式会社パソナとAirbnbが業務提携を結び、地方創生の実現に向けて始動。なぜ、住宅宿泊が地方創生つながるのかについて、パソナの加藤遼さんに伺った。

株式会社パソナ ソーシャルイノベーション部副部長 加藤遼さん

世代を問わず“働きたい”気持ちを支える住宅宿泊。

Q:Airbnbとの提携に至った経緯を教えてください。

まずは、訪日外国人数が激増しているのに、宿泊施設の数が足りず、住宅宿泊のニーズが高まっていることが挙げられます。2019年にはラグビーワールドカップ日本大会、2020年には東京オリンピックなど、大きなイベントが続くのに、宿泊施設の数を含めて、受け入れ態勢は万全ではありません。
Airbnbは世界中の人々が使っている住宅宿泊のプラットフォームサービスです。日本人だけでなく、外国人旅行客が都市部だけでなく郊外や地方でも利用されているという事例も多数あります。実際にホストとなっている方のところに私自身も宿泊した経験があるのですが、「住宅宿泊」を活用することで、地方活性化、高齢化、過疎、空き家、雇用などの問題が解決につながっていくのではないか、という実感があります。
また、Airbnbは宿泊にとどまらず、体験や現地のエキスパートがおすすめするスポットなども網羅しています。これを地方で実現できれば、日本の活性化につながっていくと確信しています。

Q:パソナがどのように提携していくのでしょうか。

現在のところ、「地域おもてなしホスト育成プログラム」というプロジェクトがスタートしています。パソナのミッションは、一人ひとりが才能・能力を活かし、それぞれのライフスタイルに合わせた働き方ができる社会の実現を目指していくことです。例えば、定年退職後も働きたいと感じた人が、自宅を住宅宿泊として貸し出したいと思った時、私たちがそのお手伝いをします。その自宅が外国人旅行客に人気になれば、きっと地元の人も一緒に手伝いたいと手を貸してくれるでしょう。生きた英語で会話をしたり、知識や可能性を広めたりすることにもつながっていくと感じます。
ほかにも、会社員をしながら空き家になっている不動産を住宅宿泊として提供したい人、農業をしながらカフェを経営したい人、子育て、介護、家事などと両立しながら働きたい人などにもピッタリです。Airbnbに代表されるシェアリングエコノミーは、これから注目の複数の収入源を持ち、ひとつの仕事に依存しない働き方、「パラレルワーク」につながっていきます。

2017年8月に誕生した、パソナが運営する観光案内所『TRAVEL HUB MIX(トラベル ハブ ミックス)』。日本の地方で魅力ある生き方・働き方を実践する「人」が中心になって、地域情報を発信し、新しい旅を提案する。ライブラリー、VR、キッチンなどを備えている。
2017年8月に誕生した、パソナが運営する観光案内所『TRAVEL HUB MIX(トラベル ハブ ミックス)』。日本の地方で魅力ある生き方・働き方を実践する「人」が中心になって、地域情報を発信し、新しい旅を提案する。ライブラリー、VR、キッチンなどを備えている。

シニア世代も大活躍! 70代のホストも続々登場。

Q:Airbnbのホストとして活躍している方には、どんな人がいるのですか?

住宅宿泊=若者世代という一般的な認識と実際は異なります。ここ最近では、シニア世代の活躍も目立っているという印象があります。例えば、74歳の女性は、都市に近くても不便なエリアの古民家を改装して住宅宿泊・スペースシェアビジネスを展開しました。彼女は、息子に薦められてスタートしたのですが、その後、外国人観光客の人気の宿に。彼らの「日本の文化を体験したい」というニーズを満たしたからこそだと思います。このような人と人との交流、そして文化を深く知ることも旅の喜びを満たすと感じていますし、こういった文化のシェアリングもAirbnbなら実現することができるのです。

Airbnbと提携した事業のひとつが2017年6月にスタートした「地域おもてなしホスト育成プログラム」。これは、空いている部屋やスペースなどの資産を活かしたい人、趣味や特技を生かして外国人観光客をもてなしたい人などに、住宅宿泊のホストとしての必要な知識やノウハウを教える。実際に受講した人の中には、早速、具体的に動き出す人もいるとか。
Airbnbと提携した事業のひとつが2017年6月にスタートした「地域おもてなしホスト育成プログラム」。これは、空いている部屋やスペースなどの資産を活かしたい人、趣味や特技を生かして外国人観光客をもてなしたい人などに、住宅宿泊のホストとしての必要な知識やノウハウを教える。実際に受講した人の中には、早速、具体的に動き出す人もいるとか。

消費型旅行から、文化に深くコミットする旅へ移行する。

Q:加藤さん自身、旅に出るとAirbnbの宿に泊まっているそうですね。

最初にAirbnbに出合ったのは、2年ほど前のことです。サンフランシスコで行われた大規模なカンファレンスで、日本からの出張チーム10数名で泊まる機会があり、コーディネーターの方が、ホテルではなくAirbnbで一軒家を借りてくれたのです。そこで1週間ほど共同生活をしたのですが、これがとても楽しかった。メンバーは、企業や自治体など多種多様、ほぼ初対面の人もいたのに、みんなでスーパーに行って地元の食材を買って料理を作り、お酒を酌み交わし、個人的にも、仕事面でも大きな発見がありました。今まで、個別にホテルの部屋に缶詰めになっていたことを考えると、世界観が変わるほど楽しかった。朝はみんなでカンファレンスに出席し、終わるとそれぞれが同じ家に帰り感想を言い合う……このようなスタイルは、どんどん広がっていくと確信しました。その後、北欧やヨーロッパ、日本国内を旅しましたがAirbnbで予約しています。

Q:日本国内における宿泊施設不足の取り組みもスタートしたそうですね。

私は日本国内を仕事や旅で巡っているのですが、大規模なお祭りやイベント時の宿不足も住宅宿泊が解決策になるのではと考えておりました。そこで今年、8月中旬に徳島市で開催される阿波おどりに向けて、徳島市のイベント民泊実施業務を受託しました。パソナが市と協力して、地元の方からホスト(部屋の提供者)を募集し、受け入れ態勢の整備や宿泊客のマッチングなどを行いました。シニア世代を中心に多くの申し込みがあり、最終的に自宅提供者数26件、延べ宿泊人数は275名となりました。

徳島市・阿波おどりでのイベント民泊の様子。約130万人の観光客に対して宿泊施設数は3000程度という宿不足を解決する施策として、2017年8月11日~16日にわたり実施された。実際に宿泊したゲストからは「子どもが小さかったので、阿波おどり会場に近いホストの家にオムツ換えや授乳で一時的に帰ることができて快適でした」「次はホストに会いに徳島に来たい」という感想が寄せられた。
徳島市・阿波おどりでのイベント民泊の様子。約130万人の観光客に対して宿泊施設数は3000程度という宿不足を解決する施策として、2017年8月11日~16日にわたり実施された。実際に宿泊したゲストからは「子どもが小さかったので、阿波おどり会場に近いホストの家にオムツ換えや授乳で一時的に帰ることができて快適でした」「次はホストに会いに徳島に来たい」という感想が寄せられた。

Q:Airbnbで、旅そのものの文化が変わるのでしょうか?

これまでの旅は、名所や史跡に行き、名物を食べて……というような観光がメインでした。しかし、Airbnbが登場し住宅宿泊が普及していくと、人との交流や文化に深く関わる “暮らすように旅をする”とか“人に会いに行くために旅をする”という方向に変わっていくと思います。
パソナは今後、Airbnbと協力して地域おもてなしホストの育成に取り組んでいきます。この取り組みは、地域における新しい働き方を創造するだけでなく、その方自身の魅力を国内外問わず発信していくことにもつながります。その地域にしかない伝統や文化を継承する職人、郷土料理の得意な主婦、おもてなし精神あふれるシニア。誰もが自身の才能・能力を活かし活躍することができます。旅行者に日本の文化や暮らしを楽しんでいただくとともに、地域おもてなしホストの方々の存在も世界中に広めていきたいと考えています。

株式会社パソナ

株式会社パソナ
パソナグループは、「社会の問題点を解決する」を企業理念に、一人ひとりのライフスタイルに会わせた働き方を提案し、雇用創造に取り組んでいる。また、多様な才能を持った人材が集まって地域産業を活性化させる“人材誘致”による独自の地方創生事業も、重要な事業の柱として位置づけている。
株式会社パソナ ソーシャルイノベーション部では、観光立国、若者雇用、東北復興、海外展開、地方創生、シェアリングエコノミーなどをテーマにして、行政・企業・NPOなどと連携した事業を展開。地方創生や、新しい働き方の創造を推進し、雇用創造・産業振興プロジェクトの開発に取り組む。農林水産省と連携した『農泊』では、ホスト・農泊コーディネーターの育成事業を行う。『一般社団法人宮城インバウンドDMO』や東京駅前のコミュニティ型の観光案内所である『TRAVEL HUB MIX』など訪日外国人に日本の文化を広める事業も行っている。

Pasona x Airbnb
株式会社パソナとAirbnb Japan株式会社は、2017年5月よりシェアリングエコノミーを活用した新しい働き方の創造や地域での就労機会の拡大を目指して、業務提携を開始しました。空き部屋や空き家を活用することで、ゲストを招き宿泊体験を提供するホームシェアは、アクティブシニアや若者の新しい働き方の創造と、さらなる就労機会の拡大の可能性持っています。両社はまず第一弾として、『地域おもてなしホスト育成プログラム』を共同開発し、2017年6月より継続中。今後ホームシェアリングを活用した地方創生に向けたソリューション提案を行っていく予定です。

問い合わせ先

  • 「地域おもてなしホスト育成プログラム」株式会社パソナ
    sharingwork@pasona.co.jp
  • 「農泊」株式会社パソナ農泊セミナー事務局
    nouhaku@pasona.co.jp