Tカード提示で東北の子どもたちに笑顔を。

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みんなのおもい

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#01 建築家のおもい page.2

伊東豊雄×柳澤 潤×クライン ダイサム アーキテクツ×大西麻貴伊東豊雄×柳澤 潤×クライン ダイサム アーキテクツ×大西麻貴

本プロジェクトの特徴として、T会員の皆さまに東北のことを知って協力していただきながらつくっていく点があります。T会員の皆さまが参加していくこの仕組みについてはいかがでしょうか。

「みんなやっぱり助けたい気持ちがすごくある」

(アストリッド)

アストリッドTポイントって全国どこにでもありますよね。みんなやっぱり助けたい気持ちがすごくあるので、簡単に参加できるいいことだと思いました。プレゼントをすると自分も気持ちよくなるし。結局プレゼントはその価値が自分に返ってきます。「自分のTポイントでできた」という気持ちになれるのがいいなと思います。

伊東海外の人たちや寄付してくれる企業を見ていると、このプロジェクトに寄付することはすごく文化的な価値や意味があるといった理解があると思うのです。日本の場合、寄付する習慣や感覚が根付いていないですね。
その中で、Tポイント・ジャパンさんに『みんなの家』に価値があると思っていただけたことは、新しい企業だからこその非常に優れた感覚からだろうと感じています。新しい建築をつくっていくエネルギーをくださったという気持ちです。

アストリッド海外はCSR(corporate social responsibility)が根付いています。大きな企業は儲けだけで考えるんじゃなくて利益を社会に返す責任がある。だから企業は常に、CSR的に何をやるのかが期待されています。
私の娘も普通の日本の小学校に通っていますが、日本人は話し合いで決める協調性とか、フレンドリーにみんな仲良くで育てられているので、その中で「なんで寄付しないの?」という疑問が出てくる文化を育むことができれば、寄付という行為も自然になってくると思います。
これからはどんどん価値観が変わっていって、モノを買うよりエクスペリエンスを手に入れたり、いい思い出をつくったり、もっと“Value for Value”になるんじゃないかなと思います。「他の人には500円かもしれないけど、私にとっては10,000円。」と、それぞれの価値観でバリューが違ってもいい。そういうモデルになっていくのではと。

マークTポイントのシステムとか、時代にふさわしいやり方があると考えています。今はクラウドファンディングの時代ですね。たとえばこのプロジェクトのファンディングには何千ポイントが必要とか、お店のレジスターで見える化をするような楽しい仕掛けや、Tポイントファンディングのウェブサイトを作るのもいいですね。

柳澤今、僕たちの生活の周りでTカードを使うことは本当に多いですよね。Tポイントがちゃんと復興支援につながるんだと思ったら、みなさんギフトすると思うんですよ。日本人は寄付が苦手ですが、さっきアストリッドさんが言ったようにCSRというか、もっと個人ができるCSRがあると思うんですよね。individual social resourcesみたいな。

伊東ここにいる僕らは「HOME-FOR-ALL」というNPOを立ち上げ、『みんなの家』の移設先とか、あるいは仮設の人が少なくなったからどうやって運営していこうかといったフォローを考え始めています。そしたらマークが東京マラソンで、この大きな体で走ってくれたのです(笑)。“HOME-FOR-ALLのために私は走っています”という文字をつけて。それで結構なお金が寄付されましたよね。

マーク650万円ぐらいですね。

伊東すごいよ。

マークでも前の話と同じで85%は海外からですね。15%は日本人の友だち。あともう1人、日本の大きな建設会社が寄付してくれました。

大西Tポイントは目に見えないものだから、Tポイントでつくるものに実際に人が集まるとか、目に見えるようになるのは素晴らしいことだと思います。人がどうつながっていくかとか、どうやってご飯を一緒に食べるとか、見えないものから最も泥臭い“人間らしいことを実現するために”というところが、すごくいいなって思いました。

最後に、東北のこれからについて一言ずつお願いします。

「これからもいろんな人に愛されて生きていくっていうのはすごく嬉しい」

(大西)

大西東松島市の『こどものみんなの家』が、これからも別のところで別な形でいろんな人に愛されて生きていくっていうのはすごく嬉しいし、仮設や周辺にお住いの人たちとか、シェルターの監督さんとか大工さんと築いた関係が、これからも続いていくことも嬉しいですね。東松島や東北での経験は、私たちの仕事の仕方自体も変えました。ちょうど1年前、事務所をマンションの5階から下町の1階ガレージに移したんです。今はシャッターを開けて八百屋さん状態でやっているんですけど、建築が前提じゃない中で建築を考えてみることが、今の私たちにとって一番面白くて。また“建築家って一体なんだろう”“どういう建築家がこれから必要なんだろう”と考えたい時に、すごくリアリティを感じられることもいいですね。自分自身にとってもすごく大きな意味を持つプロジェクトだったので、それを引き継いでこれから日本のいろんなところで建築を考えていけるといいなと思っています。

「インドアの砂場が最終的には普通に屋根だけが付いている砂場になってほしい」

(柳澤)

柳澤まだ南相馬は建築が完成していない状態ですが、いくつかの雑誌に書かせていただいているのは、インドアの砂場が最終的には普通に屋根だけが付いている砂場になってほしいという願いです。また、地域の人たちが今後どうやってこの建築を使っていくのかということにも継続的に関わっていきたいですね。民間の寄付で民間が建てて、それを行政が引き受けて運営していくのは負担も大きいですが、ひとつの新しい公共建築の在り方だとも思います。また逆に民間が企画・運営して、行政が建ててという形もあるかもしれない。そういう意味では本当にスタートなので、自分として今後もサポートを継続したいと思います。

「楽しいほうに発想を変えていくことも必要」

(アストリッド)

アストリッド震災があってから、毎日を大事に生きることが大切だということに多くの人が気付いたと思うんですね。その中で“建築の役割はなんなの?”となった場合、居心地のよさとか、楽しさが何よりも大事になるんじゃないかと感じています。
日本人って我慢するのが得意だと思いますが、我慢して今の環境でマニュアル通りに生きるんじゃなく、たとえば「ここのいい場所でバーベキューをやったら楽しい」とか「歌ったら楽しい」と、楽しいほうに発想を変えていくことも必要だと思います。そして建築はそのためのただのツールだと思います。

「みんながスマイルに」

(マーク)

マーク地震や原発など、日本がまだ多くの問題を持っている時だからこそ明るいプロジェクト、ハッピーなプロジェクトがあればみんながスマイルになれると思います。そして、本当に大変な時を経験したからこそ素晴らしいものができると信じています。

「そこでしかできない建築をつくりたい」

(伊東)

伊東僕らがつくってきたモダニズム建築は、場所とか地域とか歴史とかに関係なく、どこの場所でも同じものができるという思想でつくられてきたのです。ただその結果として、東京もパリもニューヨークもシンガポールもみんな同じになってしまった。
だから僕らは、そこに住んでいる人たちが何を考えているか、その場所はどういう場所なのか、その地域はどういう地域なのか、そこに根ざした建築をつくっていかなくてはならない時期に来ていると思うのです。そのことを東北での活動で随分学んだので、これからは、地域の人とできるだけ一緒につくっていきたいし、「そこでしかできない建築をつくりたい」と思います。

今日はありがとうございました。

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プロフィール

伊東豊雄 いとう・とよお

建築家

1941年生まれ。主なプロジェクトに「せんだいメディアテーク」、「多摩美術大学図書館」(八王子)、「台湾大学社会科学部棟」(台湾)、「みんなの森 ぎふメディアコスモス」など。現在、「台中メトロポリタンオペラハウス」(台湾)等が進行中。日本建築学会賞作品賞、ヴェネチア・ビエンナーレ金獅子賞、王立英国建築家協会(RIBA)ロイヤルゴールドメダル、プリツカー建築賞など受賞。

柳澤 潤 やなぎさわ・じゅん

建築家

コンテンポラリーズについて
コンテンポラリーズは“同時代に生きる人々”という意味であり柳澤潤が主宰する設計事務所です。2000年に設立され現在は横浜・馬車道で住宅の他公共建築を中心に病院や集合住宅など多岐に渡って活動を広げています。主な作品は“みちの家”、“塩尻市市民交流センター えんぱーく”“京浜急行高架下新スタジオ”等があります。日本建築学会建築作品選奨他、神奈川建築コンクール優秀賞、JIA(日本建築家協会)新人賞などを受賞。設計活動の他にも横浜市との協働で「デザインピッチ」と呼ばれるプレゼンテーションイベントのオーガナイザーとして毎年地元横浜を積極的に盛り上げる活動に参加しています。

Klein Dytham architecture クライン ダイサム アーキテクツ

アストリッド・クライン(上)とマーク・ダイサム(下)により1991年に東京に設立。建築、インテリア、公共施設といった複数の分野のデザインを手掛けるマルチリンガルオフィス。主な作品に「DAIKANYAMA T-SITE/代官山蔦屋書店」、「SHISEIDO THE GINZA」、「Google Tokyo」などがある。また「American Retail Environment Awards」、「D&AD Awards」、「World Architecture Festival Awards」等を受賞。 現在では世界680以上の都市で開催されている世界規模のプレゼンテーションイベント、PechaKucha Nightの創始者でもあり、東日本大震災直後に開催したチャリティイベントでは100を超える世界各都市で被災地や日本を応援するプレゼンテーションが行われ、多くの寄付を集めることとなった。

大西麻貴 おおにし・まき

建築家

1983年愛知県生まれ。2006年京都大学建築学科卒業。2008年東京大学大学院修士課程修了。 主な作品に、「二重螺旋の家」、「さとうみステーション」、「小屋と塔の家」など。 現在「GoodJob! センター」「福智町立図書館・歴史資料館」等が進行中。新建築賞、SDレビュー2007鹿島賞など受賞。

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