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民泊新法対応について

2017年6月9日、「民泊」に関する新たな法律「民泊新法(住宅宿泊宿泊事業法)」が成立しました。これにより、今まで既存の法律との抵触が見られた民泊に関するビジネスにルールが定められることになり、民泊はますます盛り上がりをみせることが見込まれております。

今後、民泊を始めるにあたりどんな手続きが必要になるのか、民泊新法の企画・立案を担当し、民泊について造詣が深い弁護士の谷口和寛先生にお話を伺いました。

弁護士 谷口和寛(弁護士法人御堂筋法律事務所 東京事務所)

弁護士 谷口和寛(弁護士法人御堂筋法律事務所 東京事務所)
平成26年5月から平成28年4月まで任期付公務員として観光庁観光産業課の課長補佐として勤務。旅行業、宿泊業、民泊など観光産業の法務を担当し、「民泊サービスのあり方に関する検討会」の事務局、「イベント民泊ガイドライン」、「OTAガイドライン」、「障害者差別解消法ガイドライン(旅行業パートのみ)」、「受注型BtoB約款」の企画・立案を担当。平成22年3月東京大学法科大学院卒業、平成23年12月弁護士登録。

民泊にはどんな種類があるの?

1 民泊とは?

民泊=「住宅を活用した宿泊サービスの提供」

民泊については、「住宅(戸建住宅、共同住宅等)の全部又は一部を活用して、宿泊サービスを提供するもの」を指すものと整理されます。厚生労働省は、このような民泊が有料かつ繰り返し行われる場合、原則として、旅館業法(ホテル、旅館等の宿泊施設の衛生保持を目的とする法律)に基づく営業許可が必要としていますが、規制緩和が進み、①旅館業法に基づく営業許可自体がとりやすくなった他、②特区民泊としての認定や、③来年6月中旬までに施行される民泊新法(住宅宿泊事業法)に基づく届出を行えば、旅館業法に基づく営業許可がなくても、民泊を合法的に行えるようになりました。また、あくまでスポットでの民泊の実施を認める制度として、④イベント民泊という制度も存在します。なお、民泊を完全に無償で行う場合、①~④に関する手続はいずれも不要です。

2 民泊にはどんな種類があるの?

合法的に認められる民泊として、次の4種類の民泊があります。

  • ①簡易宿所としての民泊(旅館業法)
  • ②特区民泊としての民泊(国家戦略特別区域法)
  • ③民泊新法による届出住宅としての民泊(住宅宿泊事業法)
  • ④イベント民泊

【民泊に関する制度一覧】

  ①旅館業法 ②特区民泊 ③民泊新法 ④イベント民泊
許認可・届出等(窓口) 営業許可(保健所) 認定(保健所) 届出(オンライン) 不要(自治体の要請)
許認可・届出等のための主な要件 床面積が33平米以上であること
但し、定員が10名未満である場合、定員数×3.3平米以上の床面積があれば足りる。
1居室25平米以上。
各居室に台所、浴室、便所及び洗面設備を有ること等。
所定の書面(住宅の図面や利用権限を示す書面等)の添付 なし
宿泊日数の制限 1泊2日~ 2泊3日
(大田区は6泊7日)~
1泊2日~ 1泊2日~
年間営業日数 制限なし 制限なし 180日以下
(条例による制限も可能)
大規模イベント開催時かつ自治体の要請を受けたときのみ
実施可能エリア 全国 東京都大田区、大阪市その他大阪府内34市町村、北九州市、新潟市 全国 全国
制度の運用状況 運用中 運用中 遅くとも平成30年6月中旬から。但し、届出受付開始は、遅くとも同年3月中旬 運用中

① 簡易宿所としての民泊(旅館業法)

年中、1泊2日から民泊を営業する場合は簡易宿所の営業許可の取得が必要。

旅館業法に基づく簡易宿所の営業許可を取得すれば、一年中、最短1泊2日から旅行者を宿泊させることができます。②特区民泊に対象エリアの限定があり、また、1泊2日での利用ができないこと、③民泊新法による届出住宅に年間営業日数の制限があることからすると、民泊を事業として考えられる方には、簡易宿所の営業許可の取得が第一の選択肢になると思います。

簡易宿所の営業許可については、従前、床面積が33平米未満の物件については営業許可を取得できませんでしたが、平成28年4月から、定員数に応じた床面積(3.3平米×定員数)があれば営業許可を取得できるようになりました。もっとも、学校や保育園等の周囲100mの範囲内の施設は営業許可を取得できません。また、建築基準法等の関係法令上は宿泊施設として扱われることから、そのまま簡易宿所にすることが困難な場合があり、どんな施設でも営業許可がとれるというわけではありません。

② 特区民泊としての民泊(国家戦略特別区域法)

対象エリアは東京都大田区、大阪市その他大阪府内34市町村、北九州市、新潟市。2泊3日から。

特区民泊とは、国家戦略特別区域法に基づく特例事業(外国人滞在施設経営事業)として特区エリア向けに認められた民泊であり、平成29年6月30日時点では、東京都大田区、大阪市その他大阪府内34市町村、北九州市、新潟市において実施することができます(これらのエリア内でも、一部、実施できない区域があります。)。

特区民泊の場合、旅館業法に基づく営業許可は不要となりますが、代わりに都道府県知事の認定を受ける必要があります。認定を受けるためには、居室が25平米以上であること(自治体の判断で変更可能)や、居室内に台所、浴室、便所及び洗面設備が備えられている必要があります。

特区民泊の大きな特徴は、1泊2日で施設を提供することは認められず、2泊3日(大田区の場合は6泊7日)以上の連泊により施設を提供する必要があります。他方、③民泊新法による届出住宅と異なり、一年中、営業することができます。また、関係法令上は「住宅」として扱われるため、簡易宿所への転用が困難な場合でも、特区民泊への転用なら可能な場合があり、特区民泊を実施できるエリア内に施設があり、かつ、高稼働が見込める施設で、簡易宿所の営業許可の取得が困難な場合には、特区民泊の認定を検討することになると思われます。

③ 民泊新法による届出住宅としての民泊(住宅宿泊事業法)

オンライン上の届出により民泊を実施可能に。

本年6月、民泊に関する全国的な制度である民泊新法(住宅宿泊事業法)が成立、公布されました。

詳細については改めてご紹介したいと思いますが、民泊新法の施行により、①簡易宿所の営業許可や②特区民泊の認定を取得しなくても、オンライン上で、所定の書面(住宅の図面や、利用権限を示す書面等)を添付して届け出ることにより、民泊を行うことができるようになります。

もっとも、民泊新法は、施設が「住宅」であることを理由に特例的な取扱いを認めるものですので、対象施設は、現に人が居住する家屋や賃借人を募集中の家屋等(別荘も含まれます。)に限定されます。また、届け出た施設について、常に宿泊施設として利用することは認めておらず(もはや「住宅」とは言えなくなるためです。)、年間営業日数(宿泊させる日数)は180日以内に限定されます。また、その他、空き家や空き室を民泊に利用する場合等は、登録を受けた住宅宿泊管理業者が管理を行う必要があります(自ら住宅宿泊管理業者の登録を受けて管理することも可能です。)。

民泊新法の施行(運用開始)時期ですが、公布後1年以内に施行されることになっているため、遅くとも来年6月中旬には施行されることになります。なお、届出の受付自体は、公布後9ヶ月以内に開始されることになっているため、遅くとも来年3月中旬には届出受付が開始されます。民泊新法の施行後、速やかに事業を開始されたい方は、届出受付開始のタイミングにお気をつけください。

④ イベント民泊

大規模イベント開催時で自治体からの要請があれば、許認可なく民泊を実施可能。

イベント民泊とは、大規模イベント開催時等の多客期に、自治体が主導して行う宿泊施設の不足を補うための臨時措置であり、自治体の要請を受けた施設は、イベント期間中であれば、①簡易宿所の営業許可や②特区民泊の認定等の許認可がなくても、民泊を行うことができます。あくまでスポットで民泊の実施を求めるもので、過去には、徳島(阿波踊り)や沖縄(広島カープ優勝パレード)において実施されましたが、まだ活用実績もそう多くはない状況ですので、中長期的な民泊の実施を検討されるのであれば、やはり、①から③の方法によることになります。

まとめ

ここまで合法的に実施できる4種類の民泊を紹介しましたが、これらの①から④の制度によらずに有料かつ繰り返し民泊を行った場合、旅館業法違反として罰金が科される可能性があります。現状、罰金額の上限は3万円ですが、これを100万円に変更する旅館業法の改正が予定されており、民泊新法の施行にあわせて罰金額が増額される見込みです。このように、政府においては、民泊にかかる制度の拡充の動きとともに、非合法の民泊に対するペナルティ強化の動きもありますので、民泊にご関心がある方は、施設の所在地、構造、その事業プラン等に照らして、①から④のうち適切な方法を選択し、民泊を行ってください。